スーパーショート劇場『バイオレンス一休さん』

※この話はフィクションです。実在の団体・人物とは何の関係もございません。
 一休さんファンの人は読むと不快になると思われるので読まないように。
 あと、思ったよりも長いです。





 むか〜し、むかし、あるところに一休さんという結構その筋では有名なお坊さんがいました。得意技は理論武装、屁理屈、読唇術、というあまり友達にはなりたくないタイプでした。

一休さん、また義満がうざいことしだしたの。いつもの屁理屈でどうにかして」

「やあ、さよちゃん。今日もかわいいね。今晩どう?」

「うっせー、はげ。そんなことより、みんな橋を渡れなくて困っているの」

「(は、はげ?)えー、めんどいよー。それよりさよちゃん胸大きくなったんじゃない?」

「この色ボケ小坊主っ! どうにかしてくれたら今晩は……」

 声を発さずに動かした唇は、こう告げていました。
『寝かさないぞ』
 それを一休さんは特技の一つ、読唇術で読み解きました。

「おっしゃ、やったるでーっ!」

 微妙な関西弁、これは一休さんの本気の証です。猛然とダッシュで橋まで向かう一休さん
 その姿を見たさよちゃんは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていました。 (←伏線だよ)


 場面は変わり、ここは桔梗屋の前の橋。その橋の前には『このはしわたるべからず』と書かれた看板が立てられていました。そこに町の人たちが困った様子で立っていました。駆けつけた一休さんの姿を見つけると口々にお願いを言いました。

「どうにかしてくれよ」

「ちび」

「ここが通れないと仕事に支障が出るんだよ」

「はげ」

「今誰か私の悪口言っていなかった?」

「誰も言ってないよ。そんなことよりはやくなんとかしてくれよ、マザコン野郎」

「悪口言ったのはてめえか、ジジイっ! 謝るまで殴るつきくてやろるうあぁぁっ!」

 一休さんは、後半日本語もおぼつかなくなるほどの怒りで我を忘れて、一心不乱にジジイを殴りつけました。ジジイが泣きながら少しばかりのお布施を一休さんに握らせたことでなんとか怒りもおさまりました。

「フン、調子こいてんじゃねえぞ」

 息も絶え絶えのジジイに対して、追い討ちをかけるようにペッと唾を吐き掛ける一休さん。彼は生粋のサドでした。

「んで、この橋を渡れればいいんだろう?」

「できるの?」

「まかせとけおきなさい」

 そう言ってあぐらをかき、指に唾をつけ、それを頭に擦りつける。そして、目を瞑り考えを巡らせる。自然と人々は押し黙り、沈黙が流れ、あたりには川のせせらぎのみが響いた。そして、突然大きな風が吹き、それと同時に一休さんが叫ぶ。

「みえたっ!」

 カッと目を開いたその表情は、目とか血走っていて明らかにクスリでもやっているような顔でしたよ、とその後町民たちは語る。

「さよちゃんの今日のパンツの色はペパーミントグリーンだっ!」

 さよちゃんの右ストレートが唸る。ぶっ飛ぶ一休さん。ついでに縄で一休さんの腕をしばりだすさよちゃん。

「え? 何これ? そういうプレイ?」

「で、どうすればいいか思いついた?」

 軽く一休さんの言動を流しながらさよちゃんが尋ねると、ヤバイぐらい腫れた左の頬を撫でつつ、一休さんが言いました。

「うん、まあ見ててよ」

 立ち上がり橋に向かっていく一休さん。そして、堂々と橋の真ん中を歩いていく。

「い、一休さん。このはしは渡っちゃだめなんじゃないの?」

「うん。だから、端は渡ってないでしょ?」

 そう屁理屈をこねる一休さんはやっぱり友達にはなりたくないタイプでした。堂々と橋の真ん中を歩く一休さんでしたが、次の瞬間バキっと音を立てて橋が崩れだしました。

「うわあぁっ! 助けて〜」

 そのまま流されていく一休さんを誰も助けようとはしませんでした。

「え? 何これ? 放置プレイ?」

 それが彼の最期の言葉でした。


 実はこれはさよちゃんと、町民たちが協力して仕掛けた罠だったのです。町の人々は、毎日続く一休さんのセクハラと暴力にうんざりしていました。そこで、町民たちと協力して、一休さん退治の方法を考えました。何も知らない町民も安全で、一休さん一人をヤル方法を。そこで思いついたことが、一休さんの屁理屈を利用する方法でした。
今回のような立て札を立てれば、一休さんのような屁理屈をこねない限り誰も渡らないでしょう。町民たちの知力の勝利です。


 こうして、町に平和が訪れました。




   おわれ


○あとがき
とりあえず一言、ごめんなさい。