東方修行SSS「いつまで続くnew world」


 またやってしまった。
 美鈴の胸に広がるのは後悔の念。ベッドの上で膝を抱え込み、体育座りのような状態で目を閉じる。すると闇が世界を包み込む。目を閉じれば今の世界と自分が切り離された気がして、少しだけホッとする。
「くしゅん」
 だが、ホッとしたのも束の間、くしゃみが出る。目を開き、何故か半裸の自分を確認する。そして、思い出される昨夜のこと。鬱になる。いや、気持ちよかったけど。
「くしゅん」
 今度のくしゃみは自分のものではない。それは彼女の隣の存在から発せられた。彼女の後悔の源。全裸の十六夜咲夜さんです。
 最近は毎晩ベッドで咲夜を抱いている美鈴。もうこんなことやめましょうと彼女に何度も言おうとした。
「ん、おはよう美鈴」
 だが、咲夜の眩しすぎる笑顔を見ると何も言えなくなる。更に言えば、自分の本名を呼んでくれる唯一の人物を無下にはできない。それに……、最近では夜の時間を心待ちにしている自分をふと感じる時がある美鈴であった。
 このままではダメだ。これ以上深みにはまる前に言おう。『これ以上この関係は続けられない』と。
「あの、咲夜さん
「なーに? あ、その前に、その、あの……服を……とってもらえるかしら?」
 少し赤みを帯び、恥ずかしげな表情でそう言う咲夜。普段は絶対に見せることのないそんな顔に、美鈴の胸はときめていた。
 くっ! これは卑怯だ。こんなもの見せられた何も言えなくなる。……萌え。
「あ、そういえば……」
 渡された服を着込みながら何かを言いかけ、苦笑しながら少し言いよどむ咲夜。
「なんですか?」
 それが気になり、自分も服を着つつ先を促す美鈴。
「あのね、美鈴。お嬢様が呼んでいたわ」
 聞かなければよかった。


〜〜


 美鈴は緊張の面持ちで、自分の身長の三倍はあろうかという大きさの扉の前に立っていた。一体何を言われるのか。ただの職務怠慢に対する注意だったら、まあよしとしよう。だが、もし咲夜との関係がバレていたら……。そう思うと気が気でなかった。何故か下腹部に違和感を覚えるが、昨日の夜はっちゃけすぎたかなと気にしないことにした。
 震える手で無駄にでかい扉をノック……出来ない。
 いや、だって、死かもしれないんですよ? そんな簡単に出来ますかっ!
 心の中で叫ぶ。しかし、いつか通らなければならない道、と自分に言い聞かせる美鈴。
 ひどく喉が渇いている自分に気付く。来る前に咲夜から貰った水をコップ三杯ほど飲んだはずなのだが。ふとその時の咲夜の言葉を思い出した。
『大丈夫よ。何かあったら私が守ってあげるわ』
 不思議と力が涌いてきた。自分の方が抜けられないところまで彼女にはまっているのかもしれないと、美鈴は苦笑した。よし、と気合を入れノックをしようとする。
 攣った。
 力を入れ過ぎたようだ。気を取り直してノックノックノック。三回のノック。シーンとした廊下に響き渡る木を叩く音。待ってる間、自分の心臓の音がうるさいぐらい耳につく。唾を飲む喉の音も妙に大きなものに聞こえた。下腹部の違和感も何故かさきほどより大きなものになっていたが、緊張でそれどころではなかった。
 しかし、緊張しながら待つこと十数分。返事が無い。
 いないのかな?
 もう一度ノックしてみる。
 やっぱり返事が無い。
 誰もいないのかと思いドアノブを捻ってみる。鍵は開いていた。開けた扉の隙間から部屋の内部を覗く美鈴。最初は真っ暗で何も見えなかったが、だんだんと慣れてきたのか薄っすらとだが見えるようになってきた。
 集中すれば感じる気配。目を凝らすとベッドに人影が見えた。レミリアは、まだ寝ていたようだ。それを確認すると途端に体から力が抜ける。これで少し寿命が延びた。また、呼び出されたときに来ればいいだろうと思い、その部屋を去ろうとした美鈴だったが、何を思ったかベッドへと近づいていく。
 お嬢様ってどんな寝顔をしてるんだろう?
 そんな考えから彼女はその部屋の中へと足を踏み入れた。部屋に充満するレミリアの匂い。すーすーと聞こえる寝息。張り詰めていたせいか、感覚が敏感になっているのか? 肌を擦れる服の感触にいちいち反応する体に疑問を感じる美鈴だった。
 ゆっくりとベッドに近づいていく。近づくにつれて体が熱を帯びていく。それは咲夜との情事を思い出させるような温度。
「ん」
 時折漏れる艶やかな声。だが、好奇心は猫をも殺す。気にせず前進。
 そして、苦難の道のりの先に見えたアルカディア。そこにはかわいい寝顔があった。
 しかし、ベッドにたどり着く頃には美鈴の体は限界に達していた。
「お嬢様かわいい……。食べちゃいたい……」
 内股をもじもじさせながらそう呟く。彼女の顔には冷静さなど一欠けらもない。あるのは情欲ただひとつ。
「……いただきま〜す」
 少しの間をおき、ベッドの中へと潜り込む美鈴。
「ん〜」
 流石に人が入ってきて気付いたのか目を覚ますレミリア
「おはようございます、お嬢様〜」
「はっ? へっ? なに?」
「これから、私がお嬢様を食べちゃいます」
「え、え、ええぇぇーっ!?」
 突然の事態に状況が飲み込めないレミリア。じたばたと慌てふためく。
「どうしたんですか?」
「聞きながら服を脱がせるな! んっ!」
「ふふふ、お嬢様かわいい」
「あん。や、やめなさい!」
「じゃあ、お嬢様が私の名前を言えたら許してあげます」
「こんな無礼者の名前なんて知らないわ」
「そうですか」
「ふん、そうよ」
「じゃあ……」
 一度深く息を吸い、思いっきり吐く。準備は万端。
「知らないなら……その体に刻み込んであげますっ!」
「ひ、い、いやああぁぁぁーっ!」
 脱がされるパジャマ、上がる悲鳴。
 そして、その後すぐに聞こえる艶かしい吐息、響き渡る嬌声、軋むベッド。



ギシギシ……




「お嬢様、私の名前を言ってみてください」
「めい、んあっ! ほん、ひゃんっ! ……んん、ほんめいりんっ!」
「よくできましたー。さあ、ご褒美ですよ」
「あぁっ! ほんめいりん! ほんめいりんっ!」







 その日、ほんめいりんという声ともつかない叫びは一日中屋敷に響いていた。
「ふふふ」
 その声を聞きほくそえむ人物。メイド服を着た彼女は満足した様子でコーヒーを飲んでいた。
「この媚薬の効き目……すごいわね」
 どうやら、彼女が美鈴に渡した水にはたっぷりとどこから手に入れたのか謎の媚薬が注ぎ込まれていたようだ。その水を三杯も一気飲みした美鈴が乱れるのも仕方が無いということか。
「これでお嬢様も混ざってあんなことやこんなことを……」
 咲夜さん、鼻血出てますよ。



  <おわれよぅ>




うにかたさんに感謝を。
おレイp(ry!