夢。
夢を見ていた。
少女達が望んだ事。
少年が願った事。
それは奇跡。
そして奇跡は……


『Daily Life ♭1』


「ん……」

『あさ〜、あさだ』

バン

「ふあ〜、ねむ」

名雪から借りた、あいつのお気に入りの目覚ましをいつものように全部言い終わる前にスイッチを叩く。全部聞いてたら、また眠りつきそうな不良品だからな。我ながらよくこれで起きれると思う。

「あ、祐一君」

「おはよう、あゆあゆ」

部屋を出てすぐにあゆに会った。七年ぶりに目を覚ましたあゆ。そして、身寄りのなかった彼女を秋子さんが引き取る事にした。あゆは最初は遠慮したが、秋子さんの説得に陥落。まあ、もともとこんな感じの家族に憧れてたんだろう。

うぐぅ、あゆあゆじゃないもん」

うぐぅよ、朝はおはようございますだぞ」

「あ、おはようございます。じゃなくて、ボクうぐぅでもないもん」

「あ、そうだ。今から名雪起こしに行くけど一緒に来るか?」

うぐぅ、謹んでお断りするよ」

「ん、そうか」

いつも通りのやり取りをすませ、今日こそは恒例の早朝マラソンを阻止するために、死地(名雪の部屋)へと向かう。『名雪のへや』とかわいらしい字のプレートがかけてある。一応ノックしてみる。

「おーい、朝だぞ」

反応はない。いつものことだ。これからが本番だ。戦場では気を抜いたらすぐに命を落とす。そう、これからこの部屋は戦場と化す。

「あう〜、祐一、おはよう」

名雪の部屋に入る前に真琴に会った。一度は消えた彼女もものみの丘に戻ってきていた。どうして戻ってこれたのかは分からない。でも、奇跡はおきた。

「貴様なんだ! その上官への態度は! その腑抜けた挨拶は! 戦場はそんなに甘くないぞ! そんなことではすぐに命を落とす事になるぞ! 朝の挨拶はおはようございますだっ! わかったか! この豚野郎!」

「あ、あぅ〜」

「あぅ〜じゃない。おはようございますだ!」

「朝からなんなのよぅ! っていうか最初に挨拶してるじゃない!」

「ございますが足りない!」

「っていうか、その迷惑なテンションはなんなのよぅ!」

「これから戦場(名雪の部屋)に入るのだ。まともなテンションで起こしに行けるかっつーの」

「ああ、名雪を起こしにいくんだ。がんばってね」

じゃ、と一階に降りてこうとする真琴。がしっ、とその頭を掴む。

「なにするのよ!」

「お前もこい」

「なんでよ!」

「たまには俺のショー(名雪を起こす事とか)に観客が必要かなって」

「別にそんなのいらないわよ!」

とかなんとかやってるうちに……


じりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり!
がんがんがんがんがんがんがんがんがんがんが!
ぴよぴよぴよいぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよ!
びちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃ!
ずがーん! ドゴーン! ドンガラガッシャーン!

「うお!」

「きゃっ!」

名雪の部屋の目覚ましが鳴ってしまった。相変わらず近所迷惑だ

「ほら、真琴、行くぞ!」

「あう〜」

名雪、入るぞ」

聞こえてないだろうけど、一応声をかける。

「ぐあ、目覚まし増えてないか?」

「え、なに?」

「くそ! とにかくこいつら止めるぞ!」

「え、なに?」

「アタタタタタタタタタタタ、ホワッター!」

40個(推定)の目覚ましを我ながら見事な手つきで止めていった。世界目覚まし早止め選手権第二位の実力は伊達じゃないぜ!

「なによその選手権?」

「心を読むな」

「口にでてたわよ」

「ぐあ、マジか」

「マジ」

「ま、まあいい。さっさと名雪を起こすぞ」

さっきの喧騒にも全く反応を示さず幸せそうに眠る眠り姫を見る。この時の名雪ほどむかつくやつはいない。とりあえず、いつもの方法で起こしにかかる。

「起きろおおおおおお!!!」

叫びながら、名雪の肩を掴み揺する。

地震だおー」

地震じゃねええええええ!!!」

「震度3、マグニチュード4,5だおー」

「えらく詳しい数値ね」

「はあはあ」

やっぱりこれくらいじゃ起きねえか。

名雪、お前の好きな動物は?」

「うにゅ、祐一」

いきなり告白されてしまった。猫って言うと思ったのに。
はっ!

「よかったね、祐一」

「ね、寝ぼけてるから答え間違えただけだって。あははーっ」

次の質問をして誤魔化そうとする。

「お前の大好物はなんだ?」

「うにゅ、祐一」

イチゴって言うと思ったのに。
はっ!

「やったの?」

「や、やってません!」

「うにゅ、祐一が昼寝してる時こっそり犯ったんだおー。祐一の喘ぐ姿は相当に萌えたおー」

「……」

「……」


     §    §    § 



「うー、なんだか頭が痛いんだけど?」

「気のせいだ」

「たんこぶあるんだけど」

「幻聴だ」

「耳は関係ないよ」

「うるさい、さっさと食え」

「あらあら」

自分の貞操が奪われたのを知って今少しへこんでる。

「ジャムー、イチゴジャムー」

今無邪気にイチゴジャム賛歌を唄ってる従妹の少女にまさか犯られていたなんて、ショックでショックでショクパンマン。

「ダジャレ?」

「え? まさか」

「声に出てたわよ」

「マジか! どこらへんから?」

「『今無邪気に』から」

「全部!」

「大丈夫よ。真琴以外には聞こえてないみたいだから」

「よ、よかった」

「なにがですか?」

名雪におか、って秋子さん!」

「コーヒーのおかわりいりますか?」

「あ、大丈夫です」

「で、どうしたんですか?」

名雪に犯られたとか言うのもな、自分の娘がそんなことしてるなんて分かったら……

「あら、名雪ったらばれちゃったのね」

「え? まさか」

声に……

「いえ、別に声にはでてないですよ」

「……何故、わかるんですか?」

「企業秘密です」

「っていうか、名雪がやったこと知ってるんですか?」

「っていうか、私が仕向けました」

あんたがかい!

「祐一、どうしたの?」

「どうもせん。早く食え。また走るのやだからな」

「わかったよ」


     §    §    § 


名雪時間は?」

「んと、100mを50秒で走れば間に合うよ!」

「そうか。微妙だな」

「うん。微妙だね」

「早足で行くか」

「そうだね」

「よし、じゃあ」

「「いってきまーす!」」


・あとがき
久しぶりに書くSS。リハビリ。こう登場人物多いとうまく書けん。
前書いたベタなの書こうと思って書いたもの。あゆがうぐぅしか言ってない。